いつも皆といる自分が自分じゃないどいう事はなく、やはり好きな人の前では変ってしまう。
ただバッシュを見ているだけで幸せだと口に出来る自分に――-

淡いランプが灯る部屋

僅かに見える互いの顔

そして、優しく微笑んだ彼女はいつもの言葉を口にした。






safe and sound






「明日、、、気をつけてね」

「ああ」

「本当に?」

「そんなに心配するな」

大きな手の平で柔らかく頬を包み私に向かって小さな笑みを浮かべる。

「バッシュ」

「ん?」

「好き」

「俺もだ」

「またそうやって言ってくれないんだから」

いつもの事だとクスクス笑えばバッシュは少し困ったように眉を寄せ私の頭を撫で始める。

「寝かしつけよとしてる?」

「そうゆう訳じゃないが、明日も早いのだろう」

「だって」

こうしていられる時間なんて殆どないのに。

「寝たらバッシュが・・・」

「ここに居るから安心しろ」

「・・・・・・・・・うん」

どうしても眠気に押されて視界が霞んでゆく。
ゆっくりと頭を撫でる手が下り私の瞼を降ろそうとする。

「バッシュ・・・・好き」

その手をギュッと握り締め、嫌だと頭を横に振れば反則のような優しい声。



「・・・嫌」

気をつけてとしか口にはしない、私の知らない処に行かないでとは言えないから。
彼がどんなに強くとも不安で仕方が無なくて。
もしも、自分が強ければ彼に近づけるだろうか?

「無事で帰ってきてね」

「心配ばかりかけて済まない」

「ううん、、、、そうじゃないの」

「君を守れる力があれば、これ程苦しい思いはしないだろうな。。。」

「バッシュ・・・」

「今まで守れなかった事を悔いて国を思い戦ってきた。だが、今は君がいるからこそ守りたいそう思う」

「・・・・・」

もし―――自分がバッシュの立場なら迷わず同じ事をするのに、
解ってほしいと優しく諭されてもすぐには首を縦には振れなくて。

「傷ついては欲しくない。私あなたの傷も癒せないのに」

にはの役割がある。だから待っていてくれないか。俺が帰ってきた時君には笑って出迎えて欲しいんだ・・・」

「・・・・約束、してね」

目を押さえていた手が離れ突然、私を覆うように重ねられた体と抱きしめる腕・・・。
そして、バッシュの唇が私の耳に触れた。



締め付けられているのは身体なのか心なのか。
バッシュの背中に手を乗せれば腕の力はより強くなる―

「強くなりたい私」

「君の代わりに俺が強くなろう」

だから―

「辛いかもしれないが待っていてくれ」

バッシュの腕の中で小さく頷いて、めい一杯抱きしめる。

「待っています、ずっと」


の背中に廻し抱きしめた時、ふと、この瞬間思った。『もしも』と、この先の未来を見て良いだろうか―
いや、、、待っていて欲しいと言った時点で最早・・・・。



「そうだ・・・・な」

終わりかけた会話は唇で繋がれ、続く言葉はまた私の心を強く打つ。

「君とこうしてどれだけ過す事が出来るだろうか?」

「飽きるまで、ね」

「それは『ずっと』、という事か・・」


は言葉の代わりに目を細めバッシュを見つめる。


だからどうか―

気をつけて。無事で帰ってきて。

思うだけでは叶わぬ事でも、何もしないよりは遥かにいいから。
貴方を思う気持ちがどこかで貴方を護れるかもしれない―